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スカイハウス2024.10.05

スカイハウス
30年以上も前のこと、文京区で設計打合せをした際、偶然見つけた名建築「スカイハウス」
確か雨降る日だったと思います。久しぶりの再会に今は少し寂しい感じの佇まいですが、どこか威風堂々としているように私には見えました。

当時、帰り途中、雨の護国寺を通りかけた私の目に、若者(当時私も若者でした)が叫び声を発し泣いている情景が飛び込んできました。

そう、尾崎豊の告別式を目の当たりにしたのでした

この住宅は雨のスカイハウスといった印象が私の心に強く残っていますが30数年ぶりのこの日は大雨予想が外れた曇り空でした。

#スカイハウス
#建築家
#菊竹清訓
#尾崎豊
#護国寺

たとえばキッチンウェア2024.09.16

最近珈琲ドリッパーを替えました。
その名も「フラワーリブ」些細な買い物ですよね。

でも満足度というか幸福度がそれ以上に増すことがあるのです。私の場合。
毎日の珈琲担当が私だからなのか、珈琲を淹れる時、そしてじっくり味わう時、室内の環境を良くすることでもっと生活に潤いが生まれると私は思うのです。部屋が雑多なモノで溢れ落ち着きが無かったり、不要なテレビから雑音が響いていたり…そんな部屋で淹れた珈琲は落ち着かず気分的に美味く感じられないのではないでしょうか。

このような些細な感性が実は建築設計でも必要なのです。安さを追求するあまり、間取りや窓の位置が決まっている規格住宅が見受けられますが、それは周辺環境に配慮していない「寝て」「起きて」「食事をする」機能だけの住宅のように見えてしまうのです。
しかし料理が好き、車が好き、読書が好き. etc. その人の秘めた生活や趣味が必ずあるはずです。その個性を生かす住宅を考える時、予算以外に太陽光の位置、風の通り、音、匂い、隣接する住宅環境、窓から見せたい(あるいは見せたくない)景色など豊かな生活を送るためには欠かせない感性ですね。
最近予算に厳しい物件が多く、工事費を重点的に考える時間が多くなってきましたが、それでは建築家の職能として欠けていると感じたと同時に、いつまでも豊かな暮らしを感じ取れる感性を失わない気持ちでいたいと改めて思わせてくれた珈琲ドリッパーでした。

 

冷房のこと2024.08.28

ジリジリと陽射しが強い夏は一日家の中で好きな事をしたい時がありますよね。

部屋では好きな読書や書き物など。あまり知られていない空調機かと思いますが、そんな時は冷暖兼用のパネルヒーターを選択肢として考えてみてはいかがでしょう。特に冷風が苦手なタイプであればお勧めです。写真のような格子状のパネルに冷水(不凍液)を流すことで結露を生じさせ除湿をするものです。

室温は25-27度程度までしか下げる事が出来ませんが、輻射冷房のため暑くも寒くも無く非常に快適です。この冷暖房機は弊所に採用した機器ですが、室温・湿度が一定で体の負担が少なく仕事が捗ります。ただ、直射日光がサンサンと入る場所は外付けブラインドなど日差しを調整する工夫が必要です。

いっぽう我が家では20数年前から一般的なエアコンを採用し
その結果「暑い!」「寒い!」「風が当たる!」のつぶやきが一日何回も…

断捨離2024.08.19

事務所の出来事なのですが、夏季休暇を利用して今まで作ってきた模型を思い切って全て処分しました。

事務所の断捨離のため、そして頭の中のリセットのためです。更に別の理由もあるのです。ここ数年の間に模型を作る機会がめっきり減ってきたのです。というのも今までは物件ごとに建物のプロポーションや室内から隣家がどう見えるかなど模型で検討してきました。

もちろん依頼者に説明するためにも大切な作業のひとつでしたが、今はPC上で仮想空間など、より現実的な建築空間が確認できる事が理由のひとつです。もう一つ処分の理由は、事務所に残された模型はコンペで選ばれなかったものや発注者と意見の食い違いから実現しなかった模型がほとんどで、別の場所でその案の一部を使えないか、などなど未練タラタラな状況の打破も理由なのです。

と言う訳で、事務所内が随分とすっきり、そして私の頭の中もすっきりした盛夏の とある日の出来事でした。

 

養蚕集落と鉄山と鉄馬(オートバイ)2024.08.12

この夏、5月の連休以来のツーリングに出かけました。昨年は東北を3日間巡ってきましたが、今年は台風、地震など不安があり大人しく日帰りで集落を散策してきました。
今回は夏の晴天に恵まれた日だったので、本能的に涼しい里山方面へ向けてオートバイを走らせました。目的地は群馬県の山と川に恵まれたところ。まずはツーリングの人気ルートで有名な嬬恋パノラマラインをのんびりと高原野菜を散策しながら走り、途中休憩しようと広い空き地を見つけバイクを停めたところ先客が休憩中。イギリス製バイクでソロツーリングを楽しんでいるという名古屋から来た方と暫し談話を楽しみました。「長野はいいですね。少し走れば気持ち良いツーリングルートがあり」「あの山は浅間山ですか?」, etc.

高原で休憩後、最初の目的地へ。群馬県吾妻にある重要伝統的建造物保存地区に選定された「六合赤岩地区」を散策しました。ここは養蚕が盛んであった集落で、いぶし瓦と漆喰壁で統一された自然風景に溶け込んだ集落でした。道は細く曲がりくねり、そしてアップダウンもある集落は造成などされず自然のままの良い雰囲気。丁度お昼ごろの散策だったのか、人影が見当たらず残念でした。夏の正午の晴れた日差しは強烈で、水分補給をしたいと思ったところ、本を無償提供している本小屋を発見。小屋前のベンチに腰掛け暫し水筒に入れてきた冷たい麦茶を飲みながら、静かな集落で目と耳を澄まし休憩していると、ガラス戸の開閉音や鳥のさえずりが聞こえてきました。人の営みと動植物の生活が調和しているように聞こえたのは私の思い過ごしでしょうか。そこには電子音の無い、とても癒しの場に思えました。

その後、集落の近くに「旧太子駅」があり向かいました。ここは昭和45年まで旅客として営業されていたようですが、その前は鉄石?運搬用の駅だったようです。

線路と並行して残っているコンクリートの構築物は恐らく鉄石(鉄粉?)を下の運搬車両に落とすための施設かと。帰り際にこの受付をしていた女性に近くの集落について話したところ、どうやら保存地区に住んでいる方のようでした。最後に集落の住民と話が出来て良かった!


この後、四万温泉で汗を流そうと考えていましたが、余計に汗が出そうなので帰ることにしました。帰りは草津温泉から志賀草津ルートを走り夕方帰宅。
20年前から今回のように細い路地を散策できる移動手段としてオートバイを乗り始めましたが、この日は道中「立ゴケ」しそうな場面も数回あり危険を伴うことに我ながら認識。帰路の頭の中ではオートバイを降りようか、もうしばらく乗り続けようか迷い続けた日でした。そしてその結論にはしばらく時間が掛かりそうです。

知恵を絞る2024.08.05

節目の年齢となったタイミングで同年の友人たちと食事会をした。「当日は500円以内のプレゼントを持ってこい!」との指令を受け、(いまどき500円では何も買えないぞ)と思ったが、ここは敢えて【知恵を絞り工夫しろ!】との奇問だと解釈した。

建築設計でも予算は大切な要素です。今回の指令も「理想の住宅を3000万円で設計してください」と言われたのと同じですね。
設計の仕事は、言われた事を言われた通り図面化する仕事ではなく、知恵を絞り良く考えて、考え抜いて希望以上の建築を創造する楽しい仕事なのです。街を見渡せば窓や玄関の位置がなぜここに?なんて思う事もしばしばありますが、これも熟慮した設計なのかな。

この指令を挑発と受けた私は、プレゼント選定にあたり選定方針を「60」「赤い色」「長生き」そして「500円」と決めデパートなどを物色し、安売りしていた600円の商品を手に入れた(安売りを探すのも工夫のひとつ!)当日、無記名のプレゼント交換で喜ばれるもモノ、首をかしげるモノなど様々な表情を受け取る側で垣間見られました。そして私のプレゼントはどうやら微笑みがあった?ように感じられた?(何をプレゼントしたかは秘密です)

頂いたプレゼントは手前のカード立て。青色の球体は地球です
気に入ってます

我が家のこと2024.07.23


最近自宅のリノベーションを漠然と考えています。
耐震性能や断熱性能そして歳を取ったせいか今後の階段の上り下りも少し心配になってきたからなのです。25年以上前にお盆休みを利用して一週間ほどで描き上げた自宅の設計図ではありますが、暮らしに潤いもあり、我ながら気に入っております。が、そろそろ…あちらこちらで傷みも出はじめ手を入れる時期かな と。で、図面に手を入れ始めたのですが、小さな住宅に、どうしてどうして手間取っております。

話は少し反れますがスペイン王カルロス1世がこんな事を口にしたそうです。
「世界のどこにでもある建物を作るために世界のどこにも無い建物を壊してしまった」
世界遺産になっているコルドバにあるメスキータをレコンキスタによりイスラム建築からキリスト建築に作り替えられた際に発した言葉のようです。

我が家はメスキータのような偉大な建築物ではありませんが、少なくともリノベーション後に「失敗した!」なんて後悔はしたくないものです。
数十年後にこの住宅が別の家族から愛情を注がれているのか。それとも解体され、ありふれた住宅になってしまわないか。そんなヨコシマな妄想も頭の片隅に思い浮かべながら週末の自宅リノベ設計を楽しんでおります

 

昔を懐かしんでの仮想着工!2024.04.04

6月着工予定のクリニックです。それに先立ちPC上で事前着工を試みて1階まで立ち上がりました。30年ほど前まではT定規と鉛筆で図面用紙に鉛筆を走らせていましたが、時代は変わりましたね。それぞれの時代の手法に一長一短はありますが、好き嫌いでいったら鉛筆とT定規で描く方が頭と描く線が直結しているようで好きです。鉛筆のカーボンで袖が真っ黒になり、いつも京王線の最終電車に乗り込むと、同じように袖が汚れている恐らく同業者であろう方々を見ると(がんばってるなぁ)と心の中でつぶやく日々が懐かしい思い出です。そして一級建築士の問題集に目を向けている姿を見て自分も鞄から問題集を取り出したり…まさかねぇ、こんな時代になるなんて。と感慨深げにこの図面の入力に格闘している毎日です。

今年で最後 そして最後2023.12.28

以前住宅を設計させて頂いた奥様から
「今年で勤めていたお店やめるの」
いつも混んでいる中華料理店を
今年で辞めると言うのです。
「では今年中に食べに行きます」
と答えたのは2ヵ月前。
仕事が忙しく
ついついお店に行く機会を逃し
やっと本日立ち寄る事ができました。
昼の1時過ぎ、混んでいるお店の
カウンター席に腰を下ろし
お勧めの品を頼んで
しばらく待っていると
先に食事をしていた方々が
一斉に清算をすませ店を後にして…
気が付くとお店には私ともう一人だけ
「珈琲いかがですか」と聞かれ
「では頂きます」と答えながら
「いつまでですか?」
「今日まで!」と力強い言葉が
返ってきました。
「ぎりぎり間に合いました」
「お疲れ様でした」
と声を掛けながら清算をお願いすると
「お代なんて頂いたら
主人に叱られちゃう」
「最後の最後のお客さんです」
と言われ
もう一度「お疲れ様でした」
今日で私も仕事納め。
そして最後の最後の挨拶が
心に残る挨拶となりました。
来年も 良い年でありますように。

久しぶりの模型創り2023.08.25

某クリニックの外観を検討して一週間が経ちました。
スケッチを描いたり、PC上でCG検討したり…
それがですね、これだ!という案が浮かばないのです。
最後の手段は模型。
以前のように自分の手をたくさん動かし頭に働きかけたら…
案外私らしいクリニックの外観になる?
いやいや、なるように頑張るのみです。

仕事の効率化2023.05.07

今年度完成予定の保育園の外壁色を検討しております。今までは2次元の図面に色を塗り、頭の中で立体をイメージしながら素材や色などを検討してました。今回は初めて現在習得中の3次元設計(BIM)を駆使し、まずは外部の素材を検討中です。非常に便利な設計ツールですが、自分の頭の想像力やスケッチ力が衰えてしまうのではないかと、少し心配です。これからは図面作成の効率が良くなり時間が浮いた分、スケッチや設計の思想、また技術的な習得に時間を掛けようかと。
リスキリング!仕事の効率化!時代の流れですね。

ドライブ・マイ・カー(saab900)2022.02.15

昨年暮れに映画「ドライブ・マイ・カー」を見ました。この映画アカデミー賞にノミネートされているのですね。とても長い時間の映画だったと記憶していますが、私は映画に出てくる赤い車(saab900)が出ているだけで映画館に足を運びました。この映画の良さなど分からず赤い車にくぎ付け状態だったのです。車の鑑賞などしている場合ではなかったのですね。
今はもうsaabという自動車メーカーはありません。個性的な車を創っているメーカーで倒産したのが残念でなりません。今の潮流は、安全で壊れなく、万人受けするデザインが持てはやされているのでしょう。設計者として駆け出しの頃、ある不動産に影響力のある方から「住宅は平凡なデザインがいい。売る時に個性的な住宅は売れない」と言われたことがあります。私は個人的にこの見解に疑問を抱きました。住む人の生活スタイルや好みにより住宅は個性が出てくるし、山間の住宅と海沿いの住宅が同じというのも理解できないのです。だから今の設計スタンスも、地域や住む人に合った住宅を考える事にしています。きっとsaabというメーカーも何か志す設計思想があったのだと思いますが、巨大自動車メーカーに飲み込まれたのでしょうね。業種は違いますが私の事務所も大手の建築産業に飲み込まれないよう切磋琢磨し、依頼者に理解頂ける個性的なデザインを創造できるよう頑張らないと!
最後に、写真に写っている車は以前乗っていたsaab900ですが映画に出てきた車のモデルチェンジ後の形です。仕事用として使っていたせいか良く故障しましたが、今でも愛おしい車です。