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頬が緩む建物たち2025.03.28

ここにご紹介する建物は、私には到底まねできない建築物たち。
設計者は藤森照信氏です。毎年「命の洗濯」と銘打って、あちこち興味のある建築物を視て回る事をしていますが、その中で現地に赴き写真に修めた藤森氏設計の建物をご紹介します。

高過庵

神長官守矢資料館
これらの建物は地場にある天然の材料を使い、姿もどこか頬が緩むような佇まいがまたニクイところ。そして解体する時には、土に還る、あるいは木材は再生できるため循環型社会のお手本かと思います。

空飛ぶ泥船

ラ コリーナ近江八幡
工事費は新建材を使った建物より高額であり、設計図だって描くのは大変ですね。

多治見市モザイクタイルミュージアム

多治見市モザイクタイルミュージアム入口

神勝寺 禅と庭のミュージアム

神勝寺 禅と庭のミュージアム下屋
これらの建築物を視ると設計者のみならず依頼者も素晴らしい心持ちの方かと想像します。そして天然の材料を使うことはそこに住まう、あるいは滞在する人の心を癒してくれるはず。きっと居心地が良いのです。また古くなっても汚くならず、古さが味わいになると思うのです。

今年も「命の洗濯2025」を密かに企んで…

 

 

 

子供部屋どうする?2025.03.21

そろそろ家を建てたい!子供の学習環境を良くするために。
そして、こんなキッチンあんなリビングがいい。などなど
住宅を計画するにあたり、みなさん色々な希望、想いがあって話をしてくれます。打合せのなかで楽しい時間ですね。

話は本題に移ります。子供部屋の話です。この話をするにあたり、なぜ子供部屋を取り上げたかを説明します。事務所を開設して25年になります。開設した当時のお施主さんの住まいは既に25年近くになりますが、皆さん口をそろえて「子供が大学へ行ってしまって・結婚して家から離れて寂しい・夫婦二人では家が大きく感じる・使わない部屋が増えて…」といった悩みを打ち明けてくれます。確かに使わない部屋がある事で冷暖房など光熱費も非効率的でありますね。「子供部屋」それは子どもにとっての城であり、親にとっては勉強をしてくれる大切な部屋!といったそれぞれの想いがあります。だから親の夢でもある子供部屋は大きく、太陽光が入る良い場所に創ってあげたいという気持ちも良く分かります。ただ将来を見据えた時その部屋をどう利用していくのか。そこを考えないで設計する事は非常に危険だと思うのです。考え方は様々ですが今回ご紹介する住宅の子供部屋を次の方針で設計に取組んだ住宅です。

1,まずは住宅の一番環境の良い場所は家族が過ごす場所とする
2,子供は将来独立して家から出て行く可能性が高い
3,子供の部屋は寝るための部屋であり、集中して暗記などの勉強をする部屋
4,部屋の明るさが時間ごとに変化の無い落ち着いた環境とする
5,子供部屋は将来臨機応変に対応出来る簡易壁などリノベできる構造とする

女の子の部屋に奥様のカラーを添えて


リノベーションにより押入が子供用寝室とクローゼットに


家族の集まる空間を充実させ、子供の空間はシンプル&コンパクトに

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色とガラスとプライバシー2025.03.16

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住宅には必ず窓を設けますよね。ただ無闇に考えもせず窓を付けてしまうとプライバシーは勿論、インテリアや外観のイメージを損ないます。今回ご紹介するのは工夫した窓です。今までの設計させて頂いた住宅から窓の写真をピックアップしました。色ガラスやステンドグラスを使った窓は隣家との視線を和らげるための設えです。また、窓を室内から見せない工夫やカーテンを用いない窓に仕掛け、そして窓から緑を積極的に見せる開口などをまとめましたので是非ご覧ください


玄関ホールから居住空間に入る扉とその上にはピンクの色ガラス
設計依頼のあった初対面の奥様から「バラガンのピンクを使いたい!」
とのリクエストに応えた窓


隣家の窓が同じ目線になった2階の階段ホール。ステンドグラスで目線を和らげています


隣の外灯が夜中でも眩しいため寝室の窓に木製扉を付けました


プライバシーの関係でリビング南側正面の窓は壁で塞ぎ間接光が隙間から漏れる工夫


居住空間の壁面をガラスで切り取り、坪庭には楓を植えました

旗竿地について2025.02.13

「旗竿地」という言葉を聞いたことはありますか?
これから住宅の土地を探している方々は恐らく耳にした事があるのではないでしょうか。簡単に言うと敷地が国旗の旗と竿のような形で道路から奥まったところが旗になるような変形の敷地です。資産価値で言うとあまり評価されていない土地ですね。
ただ、静かな環境、あるいは玄関までのアプローチが長く取れるなど、工夫によっては趣ある住宅の構えとなりうる魅力的な土地でもあります。土地も安い場合が多いですしね。
写真の物件も旗竿地に建つ住宅です。ここに至るまで紆余曲折ありました。設計初期の土地はこことは別の場所でしたが、法的な問題で思うような住宅が建てられず、土地探しから見直したのです。お施主さんから「候補になる土地を複数探しました!」と再び連絡があったのは数年後。そして土地の選定相談で良い印象だった敷地がこの場所だったのです。


道路から伸びる敷地、その先に茶系の壁が住宅です。右側には隣接する敷地を隠すように外壁と同色の塀を設け住宅との一体感を演出しました

住宅と目隠し壁に囲まれた中庭からは隣接住宅が見えず、空だけが切り取られた家族だけの落ち着いた空間となりました

朝の散歩2025.02.07

少し前の話です
通勤途中、ご近所のご主人と初めて顔を合わせ挨拶を交わした。25年以上の月日が流れ、ようやくご対面とは考えさせられますね。でもいい朝となりました。そして、いつも通る公園の足元を観察すると、黄色い花を見つけた。最近、時間のゆとりが少しできた事で生活が変わったようです。

ほぼモノトーンの 天然の 色! 綺麗でした

そして緑のグラデーションも キレイ!

ムラサキシキブがモノトーンの景色に花を添えていました

コナラの落ち葉が白い地面に舞い落ちて…白に茶色が合うのは天然の色だから?

クラシックカーってカッコイイ!2025.01.19

最近BSフジの「The Classic car クラシックカーってカッコイイ!」を楽しく拝見しています。昔の車なので生産ライン工場のある大量生産車ではなく、ひとつひとつ手造りの車。もちろん大衆車というよりスポーツカーがメインなので空力も考えた個性あるデザインでまさしくカッコイイ!車なのです。その車には創り側の哲学があり、更に重量バランスや軽量化など技術的な工夫もデザインの一環として哲学を注ぎ込まれた芸術品ではないかと思うのです。
ここで住宅設計に置き換えると、設計にも哲学がありそれを突き通す意志の強さも必要かと思う。設計依頼者からの要望を只々図面化するのでは無く、その理由を良く考え、より良い方向へ設計を促す事が大切であり、それが建築家としての職能であると思うのです。
大量生産の車作りが住宅メーカーや工務店に例えるなら、施工会社と対等な関係にある建築家はスポーツカーを創る設計者と同じではないかと。それは熟慮した設計により機能的でありカッコイイ!建物を創る責務がある存在でなければならない。それが結果的にクラシックカーと同じように愛情が注がれた長く住み続けたい住宅になるのだと、なればいいな、と最近の反省も含め思うのです。

新年のご挨拶2025.01.06

築25年以上になる歯科医院です
まだ正式に独立する前に相談を受け設計に取り組んだ初の物件なのですが、基本設計途中まで勤務しながら図面を描いた記憶があります。そして前事務所を晴れて円満退職し事務所を立ち上げた記念すべき物件なのです。

写真はつい先日の年末に撮影しました。外壁にウエスタンレッドシダー材を使い、この外観の影響なのか工事中は近隣の方々から「喫茶店ができるのかしら」と噂されていた歯科医院らしからぬ外観です。外部に木材を使っているのでノーメンテナンスと言う訳にはいきません。今まで木材の防腐塗装を3回ほど施すなど手入れをしていただいています。そしてアプローチ部にはバラを植え、少しでも患者さんの不安を払拭できる癒し空間となりました。以前はこの医院で年末ギターコンサートも催すほど待合室も居心地のよい空間になっています。これが縁で住宅を建てるお客様から声掛けして頂きましたが、25年以上の歳月で、このような設計依頼やご紹介頂きながら営業活動もせず幸運にも現在に至っております。本当にありがたいことです。2025年も第一号の歯科医院の気持ちを忘れず設計に取り組む所存です。偶然なのか今年の引き渡し第一号が歯科医院というのも運命を感じているところです。前置きが非常に長くなりましたが、本年もどうぞよろしくお願い致します。

星空を見上げて思うこと2024.12.22

空気が澄み渡る冬の夜空を寒さに耐えて天体観測を堪能してきました
木星の縞模様や周回する衛星、そして土星の環と衛生がとても幻想的に見えた。夜空を見上げた各々小さな惑星の光が望遠鏡によりテレビなどで目にするあの姿となって目に飛び込んできたのです。そこにはTV画面で見る映像とはまるで異なる感動があった。また金星は月と同じように満ち欠けがある事を初めて知り、欠けている金星の姿も見る事ができた。

この観測会では宇宙の物理的法則が地球にあるモノ、コトにも同様な働きがあるのだろう。この美しい惑星たちを眺めていると、改めて人が美しいと思える形は力学的に均衡が保たれている姿であると改めて実感した。もちろん建築美も同様ですね。不均衡な形や不適切な材料を使う事は一瞬人目を引く形態である反面、長く見ていると飽きや疲れがでてくるのだろうと今回の星を見上げながら考えさせられた夜空でした。

お客様を向かい入れる玄関2024.12.11


玄関はいわば「その家の顔でもある」とよく言われますが、私もそう思います。
家を訪れて最初に目にする玄関扉。家主が出迎えるまで来客者は玄関扉とその周辺に目を向けると思います。「あー素敵な玄関!」と思える空間には玄関扉が一翼を担います。最近の既製品玄関扉でも良いものが有りますが、私はいつも個性が出るオリジナル玄関を推奨しています。素材はやはり暖かみのある木製がいい。木製だからメンテナンス性はアルミなどの扉より劣りますが、玄関扉の位置や陽射し、そして雨が入り込まない工夫をすれば、あまり維持にも手間が掛からないものです

そして道路から玄関扉が見えない工夫も重要です。これでその住宅の趣が良くなります。そして玄関を開けた時、室内が道路から見えない事は防犯面でもメリットがありますね。

我が家の玄関扉に今年もリースが飾られました。この扉も既に30年近く経過していますが、再塗装を施したのは一回だけ。埃まみれで汚れたアルミ玄関より、少し古さもある玄関扉がなぜか飾り物に合うのと思うのは私だけでしょうか。

「ひとり」での食事2024.11.18

毎月事務所へ送られてくる照明機器メーカーの冊子にこんな事が書かれていた

ひとりで食事をする事に「淋しい」と思わない人が増えている。スーパーやコンビニあるいは宅配で購入済みのお弁当やお惣菜を食べる事が圧倒的に多く、料理を作るという文化が衰退しつつある。と

これを住宅設計に目を向けると…
そのうちキッチンが不要になる?
冷蔵庫が大きくなるのか?
「ただいま」と帰ってきてもキッチンからの匂いが無くなってしまう!

人生で食べる事は楽しい事であり健康に暮らせるうえで大切な事。
食材を吟味し、その味を楽しみ、旬なものを大切にする
そんな料理を楽しむ食文化がこの先ずっと続くことを願いたい。
そして設計者として食べる楽しさや作る楽しさを建築空間の工夫で表現できたらと思う


(写真は長野市の外断熱住宅)

スカイハウス2024.10.05

スカイハウス
30年以上も前のこと、文京区で設計打合せをした際、偶然見つけた名建築「スカイハウス」
確か雨降る日だったと思います。久しぶりの再会に今は少し寂しい感じの佇まいですが、どこか威風堂々としているように私には見えました。

当時、帰り途中、雨の護国寺を通りかけた私の目に、若者(当時私も若者でした)が叫び声を発し泣いている情景が飛び込んできました。

そう、尾崎豊の告別式を目の当たりにしたのでした

この住宅は雨のスカイハウスといった印象が私の心に強く残っていますが30数年ぶりのこの日は大雨予想が外れた曇り空でした。

#スカイハウス
#建築家
#菊竹清訓
#尾崎豊
#護国寺

たとえばキッチンウェア2024.09.16

最近珈琲ドリッパーを替えました。
その名も「フラワーリブ」些細な買い物ですよね。

でも満足度というか幸福度がそれ以上に増すことがあるのです。私の場合。
毎日の珈琲担当が私だからなのか、珈琲を淹れる時、そしてじっくり味わう時、室内の環境を良くすることでもっと生活に潤いが生まれると私は思うのです。部屋が雑多なモノで溢れ落ち着きが無かったり、不要なテレビから雑音が響いていたり…そんな部屋で淹れた珈琲は落ち着かず気分的に美味く感じられないのではないでしょうか。

このような些細な感性が実は建築設計でも必要なのです。安さを追求するあまり、間取りや窓の位置が決まっている規格住宅が見受けられますが、それは周辺環境に配慮していない「寝て」「起きて」「食事をする」機能だけの住宅のように見えてしまうのです。
しかし料理が好き、車が好き、読書が好き. etc. その人の秘めた生活や趣味が必ずあるはずです。その個性を生かす住宅を考える時、予算以外に太陽光の位置、風の通り、音、匂い、隣接する住宅環境、窓から見せたい(あるいは見せたくない)景色など豊かな生活を送るためには欠かせない感性ですね。
最近予算に厳しい物件が多く、工事費を重点的に考える時間が多くなってきましたが、それでは建築家の職能として欠けていると感じたと同時に、いつまでも豊かな暮らしを感じ取れる感性を失わない気持ちでいたいと改めて思わせてくれた珈琲ドリッパーでした。